雇用契約について解説します

雇用契約書とは、その名の通り、雇用契約を結ぶ時の、契約書です。

普通の契約書とは違います。なぜならば普通の契約以上に、雇用契約には制限があるからです。

というわけで、雇用契約とは何か、をまずお話ししたいのですが、とりあえず作り方さえわかればいいや、という方はこちらをご覧ください

雇用契約とは何か

雇用契約は、契約の中でも特殊です。

契約とは民法によると

(契約の締結及び内容の自由)
第五百二十一条 何人も、法令に特別の定めがある場合を除き、契約をするかどうかを自由に決定することができる。
 契約の当事者は、法令の制限内において、契約の内容を自由に決定することができる。

つまり、「契約というのは、その内容も、決定も、自由に決めることができるよ、ただし法律に決まっていたら法律に従ってね」ということです。

雇用契約は、いくつか制限があります。

まず、雇用契約とは何を指すかというと、民法に規定されています。労基法ではないんですね~。

(雇用)
第六百二十三条 雇用は、当事者の一方が相手方に対して労働に従事することを約し、相手方がこれに対してその報酬を与えることを約することによって、その効力を生ずる。

つまり、契約内容は、「労働に従事すること」に対して、「報酬を与える」ことを約束する、のが雇用契約です。

この一文で注目していただきたいのは、「労働に従事すること」が、雇用契約であって、「仕事」そのものではない、というところです。

例えば、「WEBサイト作成」という仕事があったとして、受け取りたいのは「 WEBサイト 」か、「 WEBサイト を作ってもらう時間」か、どちらでしょうか。

WEBサイトを作りたいが時間やスキルを自分が持っていない場合に、誰かに頼もう、となりますよね。

「WEBサイトが作れるAさんを時給○○円で雇って、作ってもらおう!あと電話取次もやってもらおう!ほかにも手伝ってもらいたいこともあるし」というのが雇用。

「WEBサイトをAさんに○○円で作ってもらおう!」というのは、雇用ではなく請負契約や業務委託契約にあたります。

WEBサイトだとわかりやすいですが、たとえば営業業務なら

「アポイント1件に対して〇円払います」

「テレアポを、一時間○○円でやってください。」

の差になります。

業務委託の場合、結果に対して報酬が発生することになりますので、細かいマニュアルや手順通りにやっていただくことはできません。

雇用の場合、指示通りにやった時間に給与が発生しますので、1件も取れなかったとしても給与が必要です。

まれに、「うちは成果に対するフルコミッションだから~」というのを聞きますが、もし仮に1件も成果を上げられなくても、時給に対しての金額は必要になります。固定給や最低保証のないフルコミッション雇用というのは、あり得ない契約ということになります。

最近は業務委託で働く方も増えてきましたが、雇用契約は民法や労基法そのた労働に関する法律で手厚く守られており、本業としては雇用契約で正社員を希望する方が多いでしょう。「明確にやってもらいたいことがある」「目標に向かうためのタスクをやってほしい」等、業務を切り分けて頼めるのであれば「業務委託契約」、「良い人に長く働いてもらいたい」「一つのことに向かって成長するチームを作りたい」のであれば「雇用契約」と、内容によってうまく使い分けていきたいものです。

また、「雇用契約」については、その他も色々決りまりがあります。「 法令に特別の定めがある場合 」が、かなり多いのが、雇用契約の特徴です。民法の規定の上に、特別法である労働基準法が適用されます。他にも「パートタイム・有期雇用労働法」や、「育児介護休業法」「労災」や「社会保険」についての法律など、「労働法」などとまとめて呼ばれる法律は大体この、「雇用契約の 特別の定め 」です。これら特別の定めの大部分が、会社が暴走しないように、従業員を守る内容で、事業主に義務が課せられています。

これらすべてを事業主は守らなければなりませんが・・・・なにせ膨大な量がありますので、大部分は社労士に任せて要所要所だけ覚えていればよいです。

雇用契約書は必要か

じつは、雇用契約を締結するとき、「雇用契約書が必要」とは決まっていません。労働基準法第15条では、「使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。賃金及び労働時間に関する事項その他の厚生労働省令で定める事項については、厚生労働省令で定める方法により明示しなければならない。」と、されています。そしてこの、「厚生労働省令で定める方法」が、原則「書面」、従業員が希望した場合は、FAXやメールでもよい、となっています。

つまり、労基法で求められていることは、

決められた項目を、書面で本人に渡す

というだけで、「契約書の形」は必ずしも必要ではありません。

労働局のひな型も「雇用契約書」ではなく「労働条件通知書」という名前になっており、会社が交付するための形式となっています。

ならば、一方的に渡せばそれでよいのか。

そこから先は、会社の考え方になります。「契約書」の形式にして、同意のサインや印鑑をいただいていれば、契約内容をお互いに確認して、同意した証拠になります。

入社の時は考えたくもないことですが、今後、お互いの意見の相違や勘違いから労使問題に発展する場合もあります。その時に、「最初に何を決めていたか」が、大きなカギになります。

労使問題とまではいかなくても、たとえば、会社は当然9時に出社してもらいたかったのに、本人は、何時からでもいいから8時間だと思っていた、とか、会社はシフトで勤務してもらいたかったのに、本人は土日は出なくてよいと思っていた、とか。

従業員の方は、前職の制度が当たり前と思っているケースも少なくありません。

双方の相違があった場合、雇用契約書に何が書いてあったかが重要になります。

会社のあたりまえと、従業員のあたりまえが、一緒だとは限りません。

なので、雇用契約の締結に当たっては、「雇用契約書」として双方合意する形式での作成を強くお勧めいたします。

では早速、雇用契約書を作ってみましょう!!!

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