198.退職後の健康保険

198.退職後の健康保険 -人事・労務の豆知識 Podcast

今回は健康保険についてです。
退職した後、任意継続にするか、国民健康保険にするか、悩むところだと思いますが、その二つの違いをお話いたしました!

ご質問の内容

健康保険制度について

今週はもう年も明けましたし、しっかりとお仕事の話をしようと思います。
質問箱からお題を頂戴いたしました、ありがとうございます!

まず健康保険とはどのような形で運営されているのか、というお話をした方がよろしいかなと思います。
日本はですね、全員健康保険に入らなければいけないことになっていますね。
働いている方は会社で健康保険に加入することになっております。
会社で入る健康保険は令和4年10月に適用の拡大(日本年金機構HP)もありました。
そちらに入ることができない方は、国民健康保険という別の健康保険に入ることになっておりますね。

国民健康保険の方からお話をしますと、国民健康保険には2種類あります。

都道府県・市町村(特別区も含みます)で運営している「市町村国保」
・業種(医師・理美容等)ごとに組織されて運営している「国民健康保険組合」

次に会社さんの健康保険(被用者保険)について、こちらも2種類あります。

事業主が設立して健康保険組合が管掌している「健康保険組合」
・全国健康保険協会が管掌している「全国健康保険協会(協会けんぽ)」

健康保険組合を設立していない会社さんはたくさんあります。
そのため健康保険組合を持っていない会社さん向けには協会けんぽと呼ばれる全国健康保険協会管掌の健康保険があります。
こちらの前身は政府管掌の健康保険でしたが、協会けんぽへと変わりました。
協会けんぽは法人であり職員さんは民間です、こちらは各都道府県に設置されています。
自分がどのような会社さんで働いているかによって、どちらかの健康保険に入るかが決まるというふうに思ってください。

都道府県ごとの健康保険料の違いについて

協会けんぽによる健康保険は、都道府県ごとに健康保険料の違いがあります。


令和4年度都道府県単位保険料率―全国健康保険協会ホームページ

例えば東京の会社さんと北海道の会社さんは上記の協会けんぽのリンクにありますように健康保険料率に差があるのがわかります。
令和4年度の保険料率は東京都は9.81%で北海道は10.39%となり、東京都の保険料は安く北海道の保険料は高くなりますね。
年齢構成が高い都道府県は医療費が高くなるため、保険料率も高くなる傾向にあります。
協会けんぽは健康保険法第160条各項により、一般保険料率などを定めています。
・被保険者等の年齢階級別の分布状況
・医療費の負担状況
・被保険者の総報酬額 等
これら地域差によるものなど、様々な要素を調整して保険料率を決めています。
そのため地域によって健康保険料が変わるということになります。

健康保険の任意継続と国民健康保険について

いざ退職しようとなった時に、健康保険をどうするのか問題になりますよね。
いままでの健康保険に入り続ける、任意継続被保険者になるという選択肢があります。
こちらは最長2年いままでの健康保険にそのまま入り続けることができます。
任意継続を使わない場合は、国民健康保険(市町村国保等)に加入するということになります。
一日もあけずに転職した場合は、次の会社さんの健康保険に入ればいいのでそこは関係ないですね。

退職時は任意継続にするか、市町村国保に切り替えるか、というところで悩むケースが多いと思います。
何か特別な事情がない限りは、市町村国保にした方が保険料は安くなると思います。
ただし事情により、任意継続にした方が保険料が安くなるケースがあります。

健康保険料について

前述した事情による、というのはなぜなのでしょうか。
それは保険料の算出方法が任意継続と市町村国保で異なるからです。
市町村国保は「前年の1~12月の年収」「加入者数」「年齢」をもとに保険料が計算されます。
すなわち市町村国保は前年の年収に保険料が左右されます。
健康保険の任意継続は会社さんからの報酬が保険料計算の対象で、原則毎年4・5・6月の報酬の平均額に保険料が左右されます。

市町村国保は前年、任意継続は現在の報酬で保険料が決まるイメージです。

そのため前年の年収がすごく高い場合は市町村国保の方が保険料が高くなる場合もあるようです。
・前年の賞与が高かった
・副業兼業で会社さんからの報酬以外で収入があった
・不動産の収入があった 等
これらの要素があると、市町村国保が高くなったりすることもありますね。

あと任意継続との大きな違いは市町村国保のほうには扶養という概念がありません。
そのため全員が被保険者になりますが、世帯主宛に納付書が届きますので保険料の納付は家族単位になります。
例えば妻が退職して市町村国保に入り、夫は会社さんの健康保険に入っています。
住民票の世帯主が夫になっている場合、妻の市町村国保の保険料については夫宛てに納付書が届きます。
こういったことで、扶養が多い場合はまたそこで計算が変わってくることもあります。

あと退職後に健康保険の任意継続をすると、保険料は在職時の倍になります。
これは在職時には会社さんが保険料を折半負担してくれていますが、退職するとこれがなくなって自分ですべて負担しなければならなくなるためです。
この場合でもだいたいは市町村国保の方が保険料が安くなることが多いですが、報酬が高い方は任意継続の方が保険料が安くなることもあります。
それは協会けんぽの任意継続は令和4年度時点の標準報酬月額上限が30万円と定められているためです。
単純計算にはなりますが、月額60万円以上の報酬がある方は任意継続でも在職時とあまり保険料が変わらないということになるでしょう。
しかしこれはあくまで協会けんぽのお話です。
健康保険組合の任意継続は組合のごとに上限額が異なり、上限額が高く設定されている場合もありますので注意が必要です。

ここまで市町村国保のほうが保険料が高くなりそうなお話をしましたけれども、これらのような特別な事情がなければ基本的に市町村国保の方が保険料が安いことの方が多いのではないかなと思います。

このように人によって任意継続と市町村国保の保険料には差があります。
任意継続するための申出は資格喪失日から20日以内にしなければならないため、早いうちに市区町村の窓口へ市町村国保の保険料を確認したほうがよいと思います。
確認後に市町村国保へ加入することを決めた場合は必要な書類がありますので次でお話します。

市町村国保への提出書類について

市町村国保へ加入するときは14日以内に届出が必要となります。
そのときに会社さんの健康保険の資格を喪失した、という証明書類の提出が求められます。
この提出書類については、会社さんが任意で発行してくれる「資格喪失証明書」か、ご自身で最寄りの年金事務所へ請求して発行してもらう「健康保険・厚生年金保険資格取得・資格喪失確認通知書」(日本年金機構HP)を使用します。
扶養家族がいらっしゃらない場合は、「退職証明書」や「離職票」も提出書類として使用できます。
「退職証明書」は労働基準法によるものです。
こちらを従業員さんが請求するときは、ただの喪失証明のような感覚なのかもしれません。
しかし会社さんにとっては紛争の可能性を考え、緊張が走る書類でもあったりします。
あと退職はしていないけれど社会保険が適用されなくなった場合に市町村国保に加入するとなると、「退職証明書」は使えませんよね。
そして「離職票」は発行までに時間がかかるので、やはり「資格喪失証明書」か「健康保険・厚生年金保険資格取得・資格喪失確認通知書」(日本年金機構HP)が手続上スムーズだと思います。
※ご自身で最寄りの年金事務所へ請求する場合はこちらの日本年金機構HPの内容をご確認ください。「健康保険・厚生年金保険資格取得・資格喪失確認通知書」の請求は協会けんぽ被保険者等が対象です。

退職のタイミングで保険料が変わるか否か

もう一つご質問がありましたね、月の途中と月初・月末退職で保険料の支払額は変わりますか?ということについておこたえします。
結論から申し上げますと、変わります。

健康保険の保険料は日割りではなく、月を単位として徴収されます。

例えば月末である12月31日に退職した場合は、翌月1月1日が資格喪失日となります。
12月分は会社さんの健康保険、1月分は任意継続か市町村国保等からの保険料徴収となります。

もしこれが月初や月の途中の退職となると、どうなるのか。
例えば12月15日に退職した場合は、12月16日が資格喪失日となります。
11月分は会社さんの健康保険、12月分は任意継続か市町村国保等からの保険料徴収となります。
これは月初の12月1日に退職したとしても12月2日が資格喪失日となりますので、同じ結果になります。

このように退職のタイミングで保険料の支払額は変わりますし、保険料は人それぞれ異なりますのでご注意ください。

今週はここまでになります。

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