204.質問箱からの労務相談!
今回は、質問箱からの労務相談です。
変形労働時間制の導入、有給休暇の問題、いろいろありそうですね。
ラジオでは、消化されている有給休暇が法定の年次有給休暇であることとしてお話してしまいましたが、もしこういったときに特別に使える法定以上の有給休暇があれば、また話は変わってきます。
変形労働時間制は難しいので、会社ごとに専門家に相談して、会社にあった制度を導入する必要があると思います。
ご質問の内容
ご質問に市川が回答します!
ご質問ありがとうございます。
今回はお勤め先の変形労働時間制と年次有給休暇(有給)の取り扱いについてのご質問ですね。
実際にどういった運営で法律に対する誤解や問題などが生じたのか察するに難しいところですが、ご質問の内容から見え隠れしている問題についておこたえしてまいります。
変形労働時間制について
ご質問にあるお勤め先はシフト制で変形労働時間制を導入されているとのことですが、こちらは1箇月単位などの変形労働時間制を採用されているのかなと思います。
まず残業代や労働時間の管理について、4つある変形労働時間制のひとつであるフレックスタイム制の総労働時間の清算と混同されているのではないかと推測されます。
フレックスタイム制は始業と終業の時刻の決定を労働者にゆだねなければなりません。
シフト制で始業と終業の時刻の決定をお勤め先からされているとのことでしたら、導入できるのは1箇月単位などの変形労働時間制であり、フレックスタイム制とは違うものになります。
1箇月単位の変形労働時間制は、使用者が業務の忙しい日と暇な日について働く時間を調整して、ルールに従って労働時間を配分する制度です。
フレックスタイム制は清算期間における総労働時間の範囲内で、⽇ごとの労働時間については労働者が自ら決定し、総労働時間を1箇月ないし3箇月で清算します。
1箇月単位の変形労働時間制=始業・終業時刻は使用者が決める
フレックスタイム制=始業・終業時刻は労働者が決める(※コアタイムを除く)
両者は残業代などの計算や管理の方法も異なります。
詳しい内容は下記の厚生労働省HPリンクでご確認ください。
「1箇月単位の変形労働時間制」導入の手引きー厚生労働省
フレックスタイム制 のわかりやすい解説 & 導入の手引きー厚生労働省
お勤め先の都合で所定労働時間働けない場合は使用者責任の休業という扱いになり、休業手当を支給される形になるかと思います。
今回は年次有給休暇が消化されるとのことしたので、そちらのお話にうつります。
年次有給休暇について
ここからは法定の年次有給休暇についてお話ししてまいります。
ご質問のように、従業員さんからの請求もないのに所定労働時間に満たないからという理由でお勤め先が時間単位で年次有給休暇を振り替えてしまうことはできないですね。
年次有給休暇というのは従業員さんが指定する日や時間に取得させるのが原則です。
これに対してお勤め先は事業の正常な運営を妨げる場合に時季変更権を行使できます。
しかしできる限り従業員さんが指定した時季に取得できるよう配慮をした上で行使しなければ、この時季変更権は認められないことがあります。
そのため「総労働時間がその月の営業日数×8時間に満たない場合、満たない時間数だけ有給が消化されるルールになっています。」というところについて、お勤め先が一方的に年次有給休暇を与えるということは、法定内の年次有給休暇についてはダメなのではと思っております。
ただし、法定の日数より多い年次有給休暇が与えられている場合、法定を超える部分は一方的に消化させるような制度も可能です。
※時間単位の年次有給休暇は1日単位の年次有給休暇とは違う決まりがあります。
・時間単位の年次有給休暇は導入には労使協定が必要になります。
・時間単位の年次有給休暇は使用者による計画的付与ができません。

・1年以内に5日の年次有給休暇を与えるために行う使用者による時季指定は、1日単位や労働者の意見を聴いた際に半日単位の取得の希望があった場合は半日単位で与えることは差し支えありませんが、時間単位で与えることは認められません。
改正労働基準法に関するQ&A 番号3-3 P32~33ー厚生労働省HP
年次有給休暇をお勤め先が自動的に振り替えることについて、従業員さんが欠勤をした時には適法とされる例もあります。
これは欠勤をしたときに労働慣行として年次有給休暇の自動振替制度がある場合、従業員さんがそれに異議を述べていないのであれば年次有給休暇は成立するという取り扱いがあるということです。(注1)
(注1 参考文献: 安西 愈先生 著,『新しい労使関係のための労働時間・休日・休暇の法律実務〈全訂七版〉』,中央経済社,2010/7/13 ,P1084~1087)
なぜならば欠勤となれば、従業員さんが労働契約上の義務を果たしていないという状況であるにもかかわらず、それをお勤め先が承認してくれていることになりますよね。
しかしこのような自動振替制度は従業員さんの異議がないという前提で認められることですので、(ご質問内容は欠勤日ではありませんが)ご質問者様のようにおかしいと思っている方がいる時点で問題となります。
ここまで解説した内容から「年次有給休暇の消化はしません。」と申し出ることは何の問題もないと思います。
限られた情報のなかのお話ではありますが、お勤め先におかれましては変形労働時間制や年次有給休暇などの適用がうまくできていない可能性があります。
労務管理としては危ない状況ですので、社労士へご相談いただいて制度を見直された方がよいのではないかと思います。
Podcastでは上記の内容をもっとわかりやすくお話ししております!
改正労働法 3.年次有給休暇の時間単位付与ー厚生労働省HPをご覧いただきながらお聞きくださるとより理解が深まりますので、ぜひご活用ください。

今週はここまでになります。
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